
「物事は距離を置いて眺めてみる」
これは私が多感な少年時代に、敗戦という歴史の転換期を経験したことと大きな関係があります。
著名な作詞家の故・阿久悠さんが、「戦後の授業はまず教科書で民主主義に反するような内容を墨で塗りつぶすことから始まった」と書いていらっしゃるのを見たことがあります。終戦のときに子どもだった同世代の私も、まったく同じ経験をしています。
ショックだったのは、先生方が、昨日まで自分たちが何を教えていたのか、まるで忘れたように教科書に片端しから「墨を塗れ」と指導し始めたことです。彼らは僕らを導く「先生」ではない。単なる職業上の「教師」だと思いました。なぜなら戦争中に押し付けていた教育を、負けた途端あっさりと放棄してしまったからです。
それからです。「人に教わったことを鵜のみにするのではなく、自分で考えないといけない」と思ったのは……。
そのせいか批判精神の旺盛な生徒だと学校側には映ったようです。PTAの会のたびに母は「お子さんは先生に対する敬意の気持ちがなく、馬鹿にしている」と注意を受けたと嘆いていました。しかし、この癖は今となっては身についてよかったのではないかと思っています。
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